1on1ミーティングとは?効果を高めるポイントと具体的なコツをご紹介
今、1on1ミーティングという対話手法が注目されています。米国のシリコンバレーで広く実施されている育成手法で、日本ではIT企業のヤフーがいち早く導入して話題になり、その後数多くの企業へと浸透しています。
社員(従業員)の成長やモチベーションの向上、キャリア支援に役立つ1on1ミーティング。その効果を高めるポイントや具体的なコツをご紹介します。
1on1ミーティングについて知ろう
1)1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、部下の育成やモチベーション向上を目的として、上司と部下が1対1で行う対話(面談)です。週1回・隔週1回・月1回といった定期的なペースで実施され、1回の面談につき30分〜60分程度の時間が設けられることが一般的です。上司が部下の現状をしっかり聴き、本人の自己解決をフォローしながら成長を促すことが特徴です。
上司と部下のコミュニケーションを活性化させることで、部下の心理的安全性を高めたり、自律的な成長を促すことを目指して実施します。
2)1on1ミーティングが導入されている背景
1on1ミーティングが導入されている理由として、大きく2つの背景があります。時代の変化の激しさと、労働人口の減少です。
①変化が激しい時代
現代は、ビジネスや個人を取り巻く社会環境の変化が激しく、先読みが難しい時代です。
・Volatility(変動的)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧さ)
の頭文字をとって、「VUCAの時代」と言われています。
こうした状況下では、これまでのやり方や経験が通用しないことも多く、社員(従業員)一人ひとりが主体的に変化を察知し、今まで以上に柔軟なスキルアップが望まれます。
1on1ミーティングを用いることで、定期的なコミュニケーションを重ねる中で部下が自分で考える力を養い、スピーディーな成長を促すことが可能です。また、上司にとっても、部下から様々な意見やアイデアをタイムリーに得て、業務改善につなげることができるほか、上司ひとりでは気づけないような市場や顧客の情報も敏感にキャッチすることが期待できます。
②労働人口の減少と流動化の加速
近年は、少子高齢化が進んで労働人口の減少が顕著になっています。それに加えて、終身雇用や年功序列の働き方が崩れ、人材の流動化が進んで転職や再就職が当たり前になりつつあります。企業にとっては、優秀な社員(従業員)が離職されてしまうのは、大きな痛手になるでしょう。
1on1ミーティングは、時にプライベートについても話しながら、部下との様々なすり合わせを行い、信頼関係を築いていくものです。不満が生まれても早めに共有でき、コミュニケーションのすれ違いも防止できます。組織の人間関係を良好にし、会社への愛着や貢献意欲(エンゲージメント)を高めることは、非常に重要な取り組みであると言えます。
3)1on1ミーティングと評価面談の違い
「上司と部下が1対1で行う対話」ということで、1on1ミーティングは評価面談と混同されがちです。しかし、そもそもの目的や実施の仕方に違いがあります。
1on1ミーティングは、部下の自律的な成長やモチベーション向上などが目的となるのに対し、評価面談は、給与面や昇降格を検討することを前提として、人事考課の結果を伝えたり、勤務態度や成果を振り返ることを目的としています。
また、1on1ミーティングは、週1回〜月1回程度の高頻度で継続的に行いますが、評価面談は四半期ごとや半期に1回という比較的長期スパンで実施します。
1on1ミーティングのメリットと注意点
1)メリット:社内コミュニケーションの向上
1on1ミーティングによってコミュニケーション頻度が増え、上司・部下間の信頼関係が深まることは、大きなメリットです。定期的・継続的に対話を重ねるのは負担になるのではないか、という指摘もありますが、目標や行動のすり合わせを細かく行いながら進めることで、結果的に信頼関係が深まっていくことが期待できます。
両者が良好な関係を築ければ、部下がアイデアを出しやすくなったり、スピーディーな報告・相談ができるようになり、組織全体の生産性を向上させることにもつながるでしょう。
また、上司が相談に乗りながら部下の日常業務の経験を振り返ることによって、そこから何らかの教訓を導き出すこともでき、その教訓をほかの業務にも活かせるようになります。これは、「経験→内省→教訓→応用」のサイクルを通じて人材の能力を貯められるという、「経験学習モデル」という成長のフレームワークに当てはまります。1on1ミーティングは、コミュニケーションを通じて部下の成長スピードを高める効果があるのです。
2)メリット:心理的安全性の向上
心理的安全性とは、「自分はこの組織にいてもいいんだ」という心理的な許可や、「自分は役に立っている」「自分の意見や存在そのものが尊重されている」という実感のことを言います。これが高ければ高いほど、個人のパフォーマンスが効果的に発揮され、チームとしても成果を上げることができます。
1on1ミーティングでは、部下の意見にとにかく耳を傾けます。しっかりと聴いてもらえたという実感が体験として積み重なることによって、自由に意見を言いやすい状態になり、部下の心理的安全性が高まるのです。
上司との関係において心理的に安全な状態が土台にあれば、1対1ではなく「チーム」という単位になったときもその効果は発揮されます。また、自分を理解し受け入れてくれているという実感は、相手を理解したいという動機にもつながり、組織全体の心理的安全性を高めることになります。
3)注意点:雑談で終わる1on1ミーティング
目的が不明確なまま1on1ミーティングを導入すると、手段だけが先行して形骸化しやすくなります。失敗例として、せっかく時間を確保しても話すネタが分からないとか、毎回雑談で終わってしまうといった声も聞かれます。
上司・部下ともに目的を共有することを土台とし、当日のその場だけでなく、事前準備と事後フォローも含めた全体的なマネジメントが必要であると意識しておきましょう。
効果的なテーマ設定については、次の「具体的なやり方」の中で紹介します。参考にされてみてください。
1on1ミーティングの具体的なやり方
1)1on1ミーティングを行う目的を定める
注意点でも述べましたが、1on1ミーティングを行う目的をしっかりと定めることが重要です。会社の人事施策全体のなかでどのような目的で取り組み、何を実現したいのかを明確にしておきましょう。
そして、その意味や目的を事前に共有しておくことが大事です。1on1ミーティングは、定期的に時間を確保して面談を行うため、ただ実施すると伝えるだけでは、仕事が増えただけと受け取られかねません。ネガティブな印象から始まると、消極的な場になってしまい、効果が期待できなくなります。
納得感と効果を高めるためには、事前の情報共有は必須です。
2)上司は聞き役に徹する
上司が聞きたいことだけを質問してしまう、部下の話を傾聴できていない、考えさせるよりも答えを誘導してしまう、などは、陥りがちな失敗パターンです。上司の意見を押し付けるような状況では、部下は委縮してモチベーションは下がってしまいます。
1on1ミーティングは、あくまで部下の自律的な課題解決と成長を促す場で、主役は部下であると心がけましょう。上司は、できるだけ傾聴に徹すること。適度な相づちを打ったり、部下の意見に共感を示すことで、部下が気持ちよく話せる場を作ることができます。部下と同じ目線で一緒に考えるという姿勢を持つといいでしょう。
3)代表的な会話のテーマ例
1on1ミーティングを効果的な場にするために、代表的なテーマの例を紹介します。部下にとっての安心感の醸成や中長期的な成長につなげるのが1on1ミーティングの目的なので、部下が話したいこと、解決したいことを最優先しながら、柔軟にテーマ設定をすることが望まれます。
①業務における困りごとについて
業務における悩みや課題は、もっとも代表的なテーマです。業務において緊急度が高いことは相談しやすいものですが、今すぐに対処が必要でなければタイミングが難しく思われがちです。「緊急度が低いが重要なこと」をあえて聞くことも効果的です。
上司は具体的なアドバイスをしたくなりがちですが、ぐっとこらえて部下の内省を促す質問を投げかけましょう。
<テーマ例>
・業務上の悩み・業務がうまく進んでいない要因
・緊急ではないが困っていること
・自覚している強みや弱み
・チャレンジしたいと考えていること
②将来のキャリアについて
部下は、どんなキャリアを描いているのでしょうか。主体的な成長は、本人にとっても会社にとっても大きな財産となるものです。部下のキャリアにおける希望を聞き、どのように支援できるかを一緒に考える時間は、部下のモチベーションの向上にもつながり、定着率の改善にもつながる効果が期待できます。
<テーマ例>
・今描いているキャリア・数年後になりたい姿
・今の業務でのやりがい・仕事をする上で大切にしていること
・どんな仕事をするときにモチベーションが上がるか
・キャリアの実現に向けて障壁や不安になっていること
③健康状態について
社員(従業員)の中には、健康状態に不安があっても周囲に気軽に相談できない、という人もいます。誰にも相談できないということがさらに不安を大きくし、ストレスが大きくなるという悪循環を生み出してしまいます。
上司が真摯に相談に乗り、解決に向けてフォローすることも大切です。
<テーマ例>
・身体的・精神的に悩んでいること
・業務の中でストレスに感じること
・組織内の人間関係について思っていること
④業務外のこと
部下のことをより深く理解するために、プライベートについて話すことも大切です。しっかりと信頼関係を築いていけば、本人が大切にしている価値観や、仕事とプライベートの両立で悩んでいることなども共有することができます。無理強いすることはハラスメントになってしまうので、本人が話しやすい話題から聞いてみるといいでしょう。
<テーマ例>
・プライベートで最近うれしかったこと
・休日の過ごし方や趣味について
・長期休暇の予定や行ってみたいところ・やりたいこと
4)最後に必ず次回の日程を確認して終える
1on1ミーティングの実施は、定期的に継続して行うことが大切です。コミュニケーションを習慣化することで、お互いの距離が縮まり、情報共有しやすくなります。
例えば、「毎週水曜14時〜」「毎月第1・第3月曜10時〜」のように、予めミーティングの日程を決めておくといいでしょう。スケジュールを都度設定する手間を省くことができ、効率的に進めることが可能です。都合がつかない場合は必ず日程変更する、というルールを徹底することをお勧めします。
そして、ミーティングの最後に必ず次回の日程を確認し終えることで、お互いのコミットメントも高まり、1on1ミーティングを効果的に実施することができます。
1on1ミーティングの事例や読むべき書籍など
1)1on1ミーティングの事例紹介
1on1ミーティングの導入によって、社内にどのような変化があったのか。実際の導入事例をご紹介します。
株式会社BLAM
運用型広告を中心にデジタルマーケティング事業を展開し、またその知見を生かしたマーケター・デザイナー特化型の複業(副業)・転職マッチングサービス「KAIKOKU(カイコク)」を運営する株式会社BLAM。
事業が順調に拡大し、社員(従業員)も増える中で、会社のビジョン・ミッション・バリューを理解し、浸透させられるマネージャーを育てたいとお考えでした。
そこで次世代リーダーや若手社員(従業員)の本音を把握し、ビジョン等の理解を促し、自律的なキャリアを築けるよう支援するべく<hanaseru>を導入しました。
・社内1on1がKPIの進捗確認のような、業務の確認に多くの時間が割かれてしまっていた
・マネージャーはメンバーに対して業務上のアドバイスやビジョン・ミッションを伝えているが、メンバーに伝わっているか不安を感じていた
といった事前の課題をお持ちでした。
<hanaseru>導入により、
・業務より「個人のキャリア」にフォーカスを当てたコーチングを通し、普段言語化できていなかったことまで引き出してもらえた
・客観的な視点からメンバーの意見や理解度を把握できたなどの効果を感じていらっしゃいます。
第三者に自社の話をすることで、風通しの良さや心理的安全性が高まる実感を得て、1on1ミーティングを実施したメンバーが自信をつけている印象があるそうです。
とくに入社2〜3年目のメンバーが積極的に施策を提案するようになったと語られています。
<hanaseru>導入事例の詳細はこちら
2)1on1ミーティングに関する書籍紹介
1on1ミーティングを理解し、実践につなげるための参考書籍をご紹介します。
■『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』本間浩輔 (著)
2012年に導入され、ヤフーの組織を活性化させた、1on1ミーティング。ヤフーはどうやって制度として定着させ、風土を変えたのか。現場で効果を上げた実例を示しながら、その目的や方法について解説されています。どのような手法なのかを理解し、実践につなげるのに適した一冊です。
■『シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』世古詞一 (著)
世界で最も人材獲得や育成に力を入れていると言われる、米国のシリコンバレー。1on1ミーティングを取り入れた、シリコンバレー式のマネジメント手法を学ぶことができる一冊です。心がまえから方法論まで具体的に解説され、質問・伝え方の例も掲載されていて、即実践につなげることができます。
■『成長する組織をつくる1on1マネジメント』佐原資寛 (著)
心理学をもとにしたタイプ別の関わり方を紹介しながら、社員(従業員)一人ひとりの個性に合わせたマネジメントの手法が紹介されている一冊。1on1ミーティングによって個々の能力を最大限に引き出せることが理解でき、現場で取り入れやすい内容になっています。
1on1ミーティングを効果的に行うために外部プロコーチの活用を!
1)<hanaseru>はマネジメント力強化のためのキャリアコーチングです。
hanaseruは、組織が変わるためにはマネジメント層が変わる必要があると考えています。マネージャーやリーダー層の自律性が高まると、業務における決断力、実行力が促進されるほか、メンバーへのコミュニケーションを含めたマネジメント力が向上します。その結果、上司との対話を通じてメンバーの行動変容が動機づけされていくからです。
hanaseruは、キャリアコーチング技法を用いマネジメントの持論形成の一助となるよう支援します。
また、一般的な社内1on1は仕事(業務)で対話をしますが、hanaseruでは人(個人の在り方)を切り口として対話をします。そのため、業務内容や社内人間関係を詳細まで把握せずとも自己の内省、自律に向けたキャリア支援が可能です。
2)デジタルアンケートによる可視化とキャリアコーチングを組み合わせ、手厚いのにお手頃な価格でマネジメント力アップと定着を実現します。
<hanaseru>では、月1回のデジタルアンケートを実施します。アンケートの内容は、社員(従業員)が企業に対し魅力的に感じる3つの価値(感情面・経験面・契約面)に沿った8つの質問項目です。それにより、ミッションへの共感度、ミッション達成度、ミッション達成を阻害する要因の有無の他、職場での人間関係、仕事への達成感、キャリア形成等、社員(従業員)の現在の心理状況や職場に対する満足度を「見える」化することができます。
可視化された価値観を共有しながら、コーチング理論に基づいた対話を重ねることでマネージャーの自己理解が進み、自己効力感を高め、意識の変容を促します。
最後に:1on1ミーティングとは?効果を高めるポイントと具体的なコツをご紹介のまとめ
1on1ミーティングは、部下と信頼関係を築き、モチベーションの向上やその成長を促すことができる手法です。変化が激しく答えのない現代において、部下が主体的に考える力を養い、スピーディーな成長を促すことは、会社にとって重要な課題と言えるでしょう。しっかりと目的を共有した上で1on1ミーティングを導入し、最大限の効果を発揮することが望まれます。
また、業務に直接関わりのない相手だからこそ率直に話せることも少なくないので、客観的な視点から自身の仕事について考えるには、外部人材の活用も効果的です。
<hanaseru>は、デジタルアンケートと外部プロ人材のキャリアコーチングの組合せで成果を導きます。お気軽にご相談ください。
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