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近年注目のリーダーシップ理論「サーバントリーダーシップ」とは?

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近年注目のリーダーシップ理論「サーバントリーダーシップ」とは?

ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し、多様性の時代に突入した現在、従来主流であった支配型リー
ダーシップに代わり、支援型のリーダーシップが脚光を浴びています。
近年注目のリーダーシップ理論「サーバントリーダーシップ」とは何か。また今回は、資生堂や良品計画
の事例を交えて解説していきます。

サーバントリーダーシップとは?

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サーバントリーダーシップは、ロバート・K・グリーンリーフ氏によって提唱された「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ論です。


アメリカ最大手の通信会社AT&Tでマネジメント研究、リーダーシップ開発に従事し、その後ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などで教鞭をとったロバート・K・グリーンリーフ氏。1970年に“リーダーとしてのサーバント”という小論を発表し、その中で初めて「サーバントリーダーシップ」という言葉を用いました。この小論がきっかけで、考え方が次第に世に広がり浸透していきました。
ロバート・K・グリーンリーフ氏は著書の中で、以下のように説いています。

 

「サーバントリーダーは、第一にサーバント(奉仕者)である。はじめに、奉仕したいという気持ちが自然に湧き起こる。次いで、意識的に行う選択によって、導きたいと強く望むようになる」
出典:ロバート・K・グリーンリーフ著「サーバントであれ The Power of Servant Leadership」

 

「サーバントリーダーシップ」を提唱したロバート・K・グリーンリーフ氏は、米国の小説家ヘルマン・ヘッセの『東方巡礼』と聖書にヒントを得たと言われています。


『東方巡礼』とは
小説の主人公である音楽家は、自分らしい生き方を探し求め、ある秘密結社に入り東方巡礼の旅の一員となった。レーオという召使い(サーバント)は一団の中でこまめにみんなの世話をする。

皆レーオのおかげで快適な旅を続けられると感じてはいるものの、気の利く召使いとしか見ていなかった。
ある日レーオがいなくなると、東方巡礼の旅そのものが成り立たなくなり、秘密結社のリーダーもわからないままに分裂してしまった。

 

主人公はもう一度レーオに会いたいと必死で探したが、困難を極めた。ついに再会できたとき、レーオこそが秘密結社のリーダーだったと知る。つまり、本当はリーダーである人が、サーバントとして奉仕を通じ、東方巡礼の旅を導いていた。
という話です。
出典:サーバントリーダーシップ第一章読書会開催報告


ロバート・K・グリーンリーフ氏は1977年に出版された「サーバントリーダーシップ」の著者であり、真のリーダーはフォロワーに信頼されており、まず人々に奉仕することが先決であるとし、リーダーシップには高位な職権が伴うものではないと述べています。


リーダーシップ理論とサーバントリーダーシップ


現代に浸透しているリーダーシップ理論は1900年代初頭から研究が始まり、時代の移り変わりと共に
変化してきました。
大きく分けてこの4つの理論が提唱されています。
①特性理論(〜1940年代)
②行動理論(1940年代〜1960年代)
③条件適合理論(1960年代〜1980年代)
④コンセプト理論(1980年代〜)


サーバントリーダーシップ理論は1970年に提唱され、コンセプト理論に属します。リーダーシップ理論について詳しくは、「リーダーシップ理論とは何か?リーダーシップ理論で組織の問題を解決するには」の記事で解説しております。併せてご覧ください。


サーバントリーダーシップが注目されている背景


1970年に提唱されたサーバントリーダーシップ。当時のアメリカは、長期化するベトナム戦争などで混迷を極め、第二次世界大戦後に超大国として君臨したアメリカ経済の絶対的な地位が揺らぎ始めた時期です。


若者たちは国のリーダーに不信感を抱くようになり、ロバート・K・グリーンリーフ氏はより良い社会を実現するには、人々から信頼される高潔な精神性を持つリーダーが必要だと考えました。


近年、サーバントリーダーシップが脚光を浴びるようになった背景には、グローバル化やITの発達などにより、ビジネスの環境変化が一層激しくなり「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれる予測困難な状況があります。不確実性の高い時代に、従来のように一人の強い統率力を持つリーダーが指示を出し、メンバーを率いるトップダウンの形は非効率であることから、組織の中で一人ひとりが主体性を持ち活躍できる環境で意思決定を行い、目標やビジョンを達成していく形として成果が求められています。

 

サーバントリーダーシップは、代表的なリーダーシップ理論の型の一つに分類されています。以前、サーバントリーダーシップを含めたリーダーシップ理論に関して「リーダーシップ理論とは何か?リーダーシップ理論で組織の問題を解決するには」の記事でも解説しておりますので、併せてご覧ください。

サーバントリーダーシップに求められる10の特性

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NPO法人「日本サーバントリーダーシップ協会」スピアーズによるサーバントリーダーの属性では、サーバントリーダーシップに求められる10の特性が存在するとしています。ロバート・K・グリーンリーフ・センター(旧名称 応用倫理研究センター、サーバントリーダーシップの啓蒙拠点)の所長であったラリー・スピアーズ氏によって提言された10の特性について解説します。
出典:スピアーズによるサーバントリーダーの属性


①傾聴(Listening) 

相手のいうことを否定せず、耳も心も傾け、相手が話したいことや伝えたいことを真摯に受け止めて聴くことが大切です。


②共感(Empathy)

人間は誰しも完璧ではありません。その点を理解した上で、相手の立場に立ち、物事を考える必要があります。どのような相手でも受け入れ、気持ちや感じ方に自分を同調させながら理解しようと努力し、思いやりを示すことが大切です。

 

③癒やし(Healing) 

失敗により落胆している人に対し、心の傷を癒し本来の力を回復させます。また組織の中では各々の足りない部分や弱みを、他のメンバーの強みで互いに補い合うのも大切な役割です。

 

④気づき(Awareness)

物事をありのままに見て、敏感に本質を掴み取り、自分だけでなく相手にも気づきを与えられます。この力は状況をより総合的な立場から見る点で役立ちます。


⑤説得(Persuasion) 

権限によって服従させるのではなく、説得や対話などのコミュニケーションで相手の同意を得たうえで、納得を促し、話を進めます。


⑥概念化(Conceptualization)

組織の将来を見据えたビジョンや目標を持ち、相手に分かりやすい形(概念化)にして伝える力も重要です。


⑦先見力/予見力(Foresight) 

現状と過去の結果を照らし合わせ、将来的に起こるであろう出来事を予測する力を指します。
先見力のあるサーバントリーダーは、万が一の場合も軌道修正や正しい判断で対処できるため、メンバーを導いていけます。
 

⑧執事役(Stewardship) 

執事役とは大切なものを任せても信頼できる人を指しています。より大きな社会的価値のために、その人なら組織やしくみを信頼できると信用できる人物です。
サーバントリーダーシップでは、執事のような気持ちで部下が能力をいかんなく発揮できるように奉仕役に徹し、一歩引いた立ち回りを意識して部下の主体性に任せるのが重要です。


⑨人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people) 

一人ひとりの資質や特性を見抜き、各々の成長を促す力が必要です。隠れた才能や価値に気づくことが重要だといえます。


⑩コミュニティづくり(Building community)

メンバー同士が互いに協力し成長できるコミュニティを作り出す力が要求されます。そのためには愛と癒しに満ちた環境を構築する必要があります。

サーバントリーダーシップのメリット・デメリット

サーバントリーダーシップのメリット


①社員(従業員)のモチベーション向上と行動変容
サーバントリーダーは部下の意見や会話に耳を傾けるため、自然と意見交換が活発になり、円滑なコミュニケーションにつながります。
上司と部下の間に信頼関係が構築されると、自主性を尊重し大事なチームメンバーと捉えてくれる上司に対し、協力や貢献をしたいというモチベーションが生まれます。
当事者意識の向上は、自分の役割を意識させ自ら考え、行動し成長を促します。


②エンゲージメントの向上

サーバントリーダーは社員(従業員)の目標やビジョンを把握し、そのために自身ができることを考え、社員(従業員)の成長を支援します。失敗を恐れず奮起して挑戦できる場は、社員(従業員)の可能性やオリジナリティをより開花させ、従業員エンゲージメントの向上につながります。


サーバントリーダーシップのデメリット

一方で、サーバントリーダーシップにもデメリットがあります。


①方針決定に時間を要する
先ほどメリットとして挙げたように、サーバントリーダーの特徴は部下の意見や希望に耳を傾ける点で
す。裏を返せば一人ひとりの意見を尊重するには、方針の決定に時間がかかる恐れがあります。
緊急度の高い迅速な対応が求められる場合、丁寧に傾聴を行うサーバントリーダーシップはデメリットになる可能性が高まります。


②社員(従業員)の成熟度によって向き不向きがある
サーバントリーダーシップでは社員(従業員)の主体性が重視されます。そのため経験値が高く知識もある人や、向上心の高い社員(従業員)にとっては最適な環境でも、社会人経験や知識の浅い人、また受け身の人にとってはサーバントリーダーシップが発揮される段階まで達していません。そのような方たちに対しては導くリーダーシップを手厚くする必要があります。
サーバントリーダーシップはミッションやビジョンの実現を軸に置くのが前提です。それがない場合、部下に対してただ優しく親切な人という存在になってしまうため、注意が必要です。

サーバントリーダーシップと組織開発

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サーバントリーダーシップはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものであるというリーダーシップ論で、その結果、組織全体の成長と目標達成が加速されます。


サーバントリーダーシップと組織開発

従来の支配型リーダーシップによるトップダウン型ではなく、傾聴や対話といったボトムアップ型でメンバーの内なる声を拾い上げ、成長を促しながら組織目標の達成に反映させていくのがサーバントリーダーシップです。メンバーから生まれる自発的な意見や考えを尊重することで社員(従業員)の当事者意
識は次第に向上し、自律型人材の育成につながります。自分で考え行動する自律型人材は、変化が激しい現代のビジネス環境において重要な存在です。


サーバントリーダーシップの事例

今回は、サーバントリーダーシップの事例として、資生堂と良品計画2社をご紹介いたします。


資生堂
資生堂の再生を命じられ秘書から経営者に抜擢された故池田守男氏は、ミッションとビジョンを社員(従業員)に共有することが、サーバントリーダーシップ実践の前提になると考えました。

『店頭起点の経営改革』というミッションを掲げ、顧客を一番上に置き逆ピラミッド型組織を構築した資生堂。一番下に位置する社長が全社員(従業員)に尽くし、奉仕すると伝え、静かに粘り強く社員(従業員)を徹底的に下から支えるリーダーシップを実践しました。
変革の必要性や可能性を社員(従業員)に理解させ、示したゴールへ主体的に向かうように動機を与えた結果、活性化につながり、経営もプラスに転じていきました。
出典:サーバントリーダーシップ効用P42-43


良品計画 
無印良品を運営する良品計画の松井忠三氏は、2000年の業績悪化に続き、翌年の株価急落の状況下で社長に就任しました。

全国すべての店舗を回り、店長と話し合い、夜は飲み会で交流を図り、現場の声から問題を明確にしました。マニュアルと縁のなかった良品計画に「MUJIGRAM」を導入。無印食品の店内業務、売り揚づくり、経理や労務管理といった良品計画のあらゆる業務に関するマニュアルで、見える化と共有化の仕組みを作り上げました。
その結果、翌年の2002年には増収増益を達成し、見事にV字回復を果たしています。
出典:サーバントリーダーシップ効用P45-46


サーバントリーダーシップに外部リソースの活用を

前述の通り、サーバントリーダーシップに必要な「傾聴」「共感」などの特性はいずれも現場の1on1ミー
ティングを通じて発揮されるものです。1on1を効果的に実践するには、傾聴の経験とスキルが必要です
が一朝一夕に身につくものではなく、多くのマネジャーは1on1の場を十分に活かし切れていないのが実情です。またスキルには個人差もあるため時間がかかる場合、第三者の外部リソースを活用するのもひとつの案です。


〈hanaseru〉の1on1ミーティングは悩みや本心を導き出し、個人の自発的な行動を促し、価値ある意見交換を可能にします。外部プロ人材のキャリアコーチングで自律型人材育成と企業の成長を促進します。

最後に: 近年注目のリーダーシップ理論「サーバントリーダーシップ」とは?のまとめ

サーバントリーダーシップとは、まず相手に奉仕することが先決です。部下一人ひとりの話に耳を傾け、それぞれの資質や特性を把握し、自発的な行動や成長を促しながら目標を達成するリーダーシップです。
部下のポテンシャルを引き出すために、傾聴や共感を基にしたマネジメント力の強化が不可欠だといえます。


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