マネジャーなら身につけたい、自己肯定感(Self-esteem)を高める5つの方法
自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや人生の満足度に大きな影響を与える意味で重要な役割を担っています。
オン・オフにかかわらず、人からどのようにみられているか気になる、すぐに人と比較して自分を卑下してしまう、失敗を過剰に恐れてしまうといった不安感を抱いてはいませんか。
本記事では、自己肯定感の低い人と高い人の特徴、マネジャーとして身に着けておきたい自己肯定感(Self-esteem)を高める方法について詳しく解説していきます。
自己肯定感(Self-esteem)とは?
「自己肯定感(Self-esteem)」という言葉は1994年に日本の臨床心理学者高垣忠一郎氏によって提唱されました。不登校だったご自身の子どもにおこなったカウンセリングで、無気力や自殺の根底にある自己・個・人格・生きる意味の喪失化といった没個性化の状態を説明する用語として、「自己肯定感(Self-esteem)」を用いています。
「自分が自分であって大丈夫」という、ありのままの自分を特別な根拠がなくても肯定できる感覚です。
一方で英語の「セルフエスティーム(Self-esteem)」は自己肯定感、自尊心、自尊感情、自己評価、自己有用感、自己重要感と日本語訳されています。総合的な価値についての主観的な感覚であるため、ご自身がどれだけ自分を高く評価し、好きであるかを意味すると言えます。
海外におけるセルフエスティーム研究では、アメリカの社会学者モーリス・ローゼンバーグ氏の自尊感情尺度(Rosenberg’s Self Esteem Scale: RSES)が有名です。10項目の尺度で自己肯定感を測定し数値化するメソッドは、国内外で広く用いられています。
また50項目からなる自尊感情尺度を作成したアメリカの心理学教授であるクーパースミス氏は、「自分自身に対する積極的および消極的な態度」をセルフエスティームの定義としています。
セルフエスティーム研究の第一人者であるアメリカの心理学者ウィル・シュッツ氏は、「自分としても誇りに思い、他者からも充分に認められるであろうという自負心・自尊心」と定義づけています。
日本は諸外国と比較して自己肯定感が低く、自分に誇りを持っている者の割合も低いと言われており、実際の調査結果ではその兆候が顕著です。
平成26年版子ども・若者白書(2014)では、日本の若者のうち自分自身に満足している者の割合は5割弱であり、自分には長所があると思っている者の割合は7割弱で、いずれも諸外国と比べて日本が最も低い結果が出ています。年齢階級別にみると、特に10代後半から20代前半にかけて、諸外国との差が大きいという結果を示しています。
出典:平成26年版 子ども・若者白書(2014)
また、Schmitt&Allik(2005)の調査では、世界53ヶ国を対象とした研究において日本人の自尊感情が最も低いことも指摘しています。
出典:Simultaneous Administration of the Rosenberg Self-Esteem Scale in 53 Nations: Exploring the Universal and Culture-Specific Features of Global Self-Esteem
自己肯定感(Self-esteem)の低さは、仕事のパフォーマンスや人生の満足度に大きな影響を及ぼす要因の一つです。自己肯定感(Self-esteem)が低い人と高い人の特徴や違い、また自己肯定感(Self-esteem)を高める方法について次の章で触れていきます。
自己肯定感(Self-esteem)が低い人の特徴
自己肯定感(Self-esteem)が低い人に見られる特徴のうち、3つをご紹介します。
①他人と比較し劣等感を持ちやすい
自己肯定感(Self-esteem)が低い人は自分を認められず自信が持てないため、他者から褒められる、感謝されるといった評価や承認を求める傾向にあり、周囲の人と自分を比較しがちです。この人が出来ているのに自分にはできないと、周りとの比較で劣等感に苛まれることも多いのが特長です。また反対に自分を過大評価し過ぎてしまい、認められない場合、劣等感が増幅するケースも見受けられます。
過剰に人の目を気にしすぎるため、精神的に不安定な状態になりやすいのが難点です。
②過去に自分の心を置き去りにされた体験がある
自己肯定感(Self-esteem)が低い原因の一つとして、虐待などとは無関係の一見普通の家庭で育ったとしても、心が置き去りにされ見捨てられる体験をしている場合があります。子どもの頃、自分の気持ちや感情に共感されず、認めてもらえない経験をした場合、自分の感情が発する内なるメッセージをそのまま受け取れず、頭で考えて反応するようになります。社会的な価値観や規範に従うようになり、本当の自分の感情がわからなくなってしまうのです。
③物事を否定的に受け止めやすい
何かが起こった時に、物事を自分と関連付けて否定的に受け止めやすい点があるのも特徴です。マイナス思考で常に不安を抱えており、自分を責め、自虐的な傾向も見受けられます。傷つきたくない一心から自分の殻に閉じこもる傾向があり、さらに失敗を過剰に恐れるため行動に移すのが難しいと考えられ、その結果、主体性を持った生き方を困難にしています。
自己肯定感(Self-esteem)が高い人の特徴
自己肯定感(Self-esteem)が低い人に共通するのはネガティブな要素であるのに対し、自己肯定感(Self-esteem)が高い人の場合、多くは前向きな要素を持っているのが特徴です。以下3つをご紹介します。
①他人の評価に左右されない
自己肯定感(Self-esteem)の高い人は、ありのままの自分に価値があるという考えが根底にあるため、自分の良いところも悪いところも素直に受け入れられます。また判断の主導権を他人に任せることはなく自分で意思決定を行うため、周りの評価に対してむやみに左右されることもありません。
周囲のアドバイスも相手と自分自身の境界線をきちんとつけ、自分とは違った視点の考え方があると受け止められます。
②失敗を恐れない
物事においてたとえ失敗したとしても自分はダメな人間だという捉え方をせず、失敗をするのもありのままの自分であると考え、受容できます。失敗を肯定的に捉え、成長のためのステップだと前向きに考えられるため、失敗に対するショックや落ち込みが少ないと言えます。その結果、何度でも新しいことや革新的なことにもチャレンジするための行動を起こしやすく、成功に近づけるのです。
③行動や思考が前向き
自己肯定感(Self-esteem)が高い人は物事の見方が肯定的なため、失敗や成功を問わず思考や発言も前向きです。また自分の意見と異なる相手の意見も尊重できるため、価値観や意見の違いも肯定しながら建設的な議論を交わせるため、コミュニケーション能力が高いのも特徴です。
自己肯定感(Self-esteem)を高める5つの方法
自己肯定感(Self-esteem)が低い人は、過去に親や教師、友人などからの言葉で傷ついた経験があり、感情に共感してもらえなかった体験、育った環境などを要因として十分に自己肯定感(Self-esteem)を育めなかったケースがほとんどです。
自分自身で自己肯定感(Self-esteem)が低いと気づきを得られた人は、自らの力で自己肯定感(Self-esteem)の向上を意識し、スキルとして後天的に高めることが可能です。
自己肯定感(Self-esteem)が低いまま大人になっても、また大人になってから失敗や挫折で自己肯定感(Self-esteem)を下げてしまった人も心配はいりません。ここでは実践的に役立つアプローチとして、自己肯定感(Self-esteem)を高める5つの方法をご紹介します。
①現状を認める、整える
現状を知るためには、今感じている自分の気持ちを素直に書き綴るのが有用です。
自分が今何に対して不安を抱いているのか、不満に感じているのか、どのような点で自信がないのか、今の状態を紙に書き出してみるとありのままの姿が見えてきます。
その際、ネガティブな要素や荒々しい言葉遣いが浮かんだとしても、正直に思いのまま書くことをお勧めします。
頭の中だけで考えていると、漠然とした不安が堂々巡りし、常にその存在が頭から離れない状態です。
一旦紙に書き出すと、思いのほか冷静で現実的に判断できる場合があります。
作業の繰り返しで自分を見つめ直していくと、以前はこのような方法で解決した、自身の受け止め方が変化したといった事例が蓄積され、徐々にありのままの自分を認められるようになります。その結果心が整理され、次の行動に進むための姿勢が整い、少しずつ前向きに変化していくのです。
②気持ちを切り替える
自己肯定感(Self-esteem)の低い人は、仕事や話し合いの場、会話などで反対意見が出た場合に、自分自身が否定されているような感情を抱く傾向があります。しかし、それはあくまでも意見や方向性の違いであり、人格や存在価値を否定されているわけではありません。
事実はあくまでも事実であり、その事実に対して自分がどのように受け止めているか、言わば「解釈」の部分を一緒にせず、切り離して考えることが重要です。
③否定せず、肯定的に
長所と短所は説明次第でどちらにも言い換えられるように、視点を変えると良い面と悪い面が見えてきます。自分自身では短所と感じているところも、良い面に目を向けると強みに変換できるのです。
例えば、自分自身が心配性だと感じていても、周囲からすると慎重でミスが少ないと捉えられている場合もあります。短所をポジティブで肯定的な言葉に言い換えて良い面に目が向けられるようになると、長所、短所を含めて自分が成り立っていると理解し、自己を認められるようになります。
④自分を大切にする
自分を大切にするとはよく耳にする言葉ですが、あまりにも漠然としています。自分を大切にするとは、人生の主導権を自分が持つことです。自分を犠牲にしてまで他人に合わせる必要はなく、周囲の評価を気にして感情を押し殺しながら無理をするのは、自分を粗末に扱っているのと同様と言えます。
一番の味方になって自分自身を理解し、自分を認めて愛情を注ぐのが大切です。自分軸を持ち、自らが感じ、考えて意思決定を行うと主体的な生き方が出来、ありのままの自分自身を認識できるようになります。
⑤客観的に自分をみる
普段、物事に対して自分ではどのような捉え方や考え方をしているのか、自分の解釈を客観視できるようになると、自己を認める第一歩になります。
現状を認める、整えるでもお勧めした通り、今の状態を紙に書き出してみましょう。
上手く客観視できないと感じた場合は、紙に書き出した自分自身の今の状態を同僚として置き換えたりして、第三者の立場でアドバイスを考えるのも一案です。
自分なら相手に対してどのような助言をするか考えを巡らすと、自分の考え方の視点が変わるきっかけをつかみ、客観的に判断できるようになります。
繰り返し行うと、不必要なネガティブ思考に傾いている状態に気づくタイミングも早まり、深く落ち込む前にその状況から抜け出せるようになります。
自己肯定感(Self-esteem)を高めるために外部リソースの活用を
社員(従業員)が自ら考え、各々の強みを生かしながら主体性を持って働くために、自己肯定感(Self-esteem)は重要な役割を果たしています。マネジャーは自己肯定感(Self-esteem)について理解し、部下とかかわる際に適切なフォローをする必要があります。
自己肯定感(Self-esteem)を高めるには、部下自身で考えて答えを導き出すコーチングの手法は有効です。自分の力で行動できるように促し、サポートしていくには、マネジャーもスキルを身に着けておきたいものです。
近年コーチングはマネジメント層に必要なスキルとして注目を集めています。書籍などで個人的に学び、コーチングの手法を取り入れている方も見受けられますが、どなたでも簡単に習得できるわけではありません。そのためコーチングの基本から知識、手法をマネジメント層に落とし込むために、外部リソースの活用をお勧めします。
自己肯定感(Self-esteem)を高めるためには1on1コーチングが有効
1on1コーチングでは定期的に部下の話を聞く機会があるため、自分に自信がない、周囲と比較して自分は劣っているといった、ネガティブ要素を含んだ心の内側にある声を拾い上げることが可能です。部下の考えを認めながら、部下自身が自分で判断できるように導きます。
コーチングの研修には様々な種類があるものの、集合型のコーチング研修では主に講義などの座学に集中し、実情としてスキルやコツを身につけられないケースも見受けられます。傾聴して導くのではなくティーチングになってしまうと、自主性を育てる意味では逆効果です。
1on1コーチングの〈hanaseru〉では、デジタルアンケートと外部プロ人材のキャリアコーチングの組合せで成果を導きます。コーチング理論に基づいた対話でマネジャーの自己理解が進み、自己肯定感(Self-esteem)を高めると共に、キャリアコーチが継続的に手厚くフィードバックを行いユーザー自身の行動変容を促します。
最後に: マネジャーなら身に着けたい、自己肯定感(Self-esteem)を高める5つの方法まとめ
自己肯定感(Self-esteem)とは、ありのままの自分に対し、特別な根拠がなくても肯定できることです。
自己肯定感(Self-esteem)が低い人は自分を卑下しやすく、劣等感を抱きやすい特徴が見受けられ、視線を気にしながら自分自身を周囲の人たちと比較してしまう傾向にあります。
一方、自己肯定感(Self-esteem)が高い人は他人の評価に左右されず、常に前向き思考で失敗を恐れない傾向です。
自己肯定感(Self-esteem)を高めるには、実践的な下記の5つの方法に加え1on1コーチングで定期的に部下の話を受け止めるのが効果的な手段です。
①現状を認める、整える
②気持ちを切り替える
③否定せず、肯定的に
④自分を大切にする
⑤客観的に自分を見る
〈hanaseru〉は、デジタルアンケートとプロフェッショナル人材の1on1キャリアコーチングを組み合わせて、話せる風土と自律自走する強い組織を目指します。コーチング理論に基づいた対話でマネジャーの自己理解が進み、自己効力感を高め、意識の変容を促します。無料でのご相談も随時受付けております。お気軽にお問い合わせください。
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