マネジャーの課題を解決に導く「メタ認知」とは? 注目される能力を徹底解説!
近年ビジネスや教育現場などの人材育成分野において、メタ認知への注目が高まっています。
本記事では、課題解決にも力を発揮すると言われているメタ認知の定義や歴史的背景、メタ認知能力の高め方について詳しく解説していきます。
メタ認知とは?
メタ認知とは、自己の認知活動(自分自身の特徴を理解して知識とし、利用すること)を観察して客観的に捉え評価し、コントロールして自分の望む方向に進めることを指します。
「認知を認知する」(cognition about cognition)、あるいは「知っていることを知っている」(knowing about knowing)を意味するメタ認知はアメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏によって研究、提唱された心理学用語で、この言葉は1976年に初めて使われました。
ギリシア語の「meta」が由来で「越える」「高次の」という意味があります。認知とは人間などが外界にある対象を知覚し、どのようなものか判断、解釈する過程を指します。よって、自己の認知活動を俯瞰的に判断し、解釈していくことを意味していると言えるでしょう。
メタ認知能力に対する考え方の起源は、古くはギリシアの哲学者ソクラテスの「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い」という言葉まで遡ります。
当時、ソクラテスは政治が腐敗しきっていたギリシアで本質を理解せず知った風な口をきく政治家たちに対し、知らないことを自覚しているという謙虚な姿勢で次々に論破していきました。この「無知の知」という概念がメタ認知につながっていると言われています。
出典:メタ認知(脳科学辞典)
メタ認知の重要性
メタ認知は、ビジネスや教育現場などの人材育成分野において高い成果を出すために非常に有効とされています。
文部科学省は学習指導要領に「学びに向かう力・人間性」を取り入れました。これは、児童生徒が「主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等があり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する、いわゆる『メタ認知』に関わる力を含むもの」を育成するとして説明しています。
出典:4.教育課程の実施と学習評価(平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説))
メタ認知能力の育成は、児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」を実現するために必要不可欠であり、未来の人材を育成する教育現場でも、近年大きな注目を集めています。
ビジネスにおいても、メタ認知能力の高い人材の増加により、業務の効率化や円滑な人間関係の構築が期待できます。
ここでは、ビジネスにおけるメタ認知能力の重要性を3つに絞って解説していきます。
①客観的思考
メタ認知能力を持つ人は、自分自身だけでなく物事の全体像を俯瞰し客観的に捉えることができます。第三者的な立場で自分や周囲の状況を観察し、主観を取り除いて先入観や固定観念、常識に捉われずに、本質を見極めるのが客観的思考です。
ビジネスにおける課題解決で大切なのは、課題を正しく理解し、真の原因を見つけ出すことです。表出していない問題こそ本質というケースも多く見受けられます。固定概念や先入観に左右されず、客観的思考で課題の本質を見つめる必要があります。
②自己認識
ビジネスにおいて自己認識(Self-Awareness/セルフアウェアネス)の能力は重要です。自己認識能力の高いマネジャーは部下との関係を良好に保ち、仕事面でも判断力やコミュニケーション力に秀でていると言われています。
メタ認知は自己の認知の認知を意味する言葉です。しかし、自分の思考や行動といった認知を知るだけでは成長につながりません。
自己認識を深めると、自分の思考や行動の癖を改善するきっかけになります。経験を振り返り、自分自身の思考や価値観、行動の全てを深く洞察する。その結果、同じ失敗を繰り返さずリスク回避が可能です。
③協調性
ビジネスの世界では、全て一人で完結できるものは業種・職種にかかわらず数少ないと考えられています。何らかの形で立場の異なる方々と協力しながら、様々な人間関係を構築する必要があります。良好な関係を築くためには協調性が大切です。
メタ認知では、他者に対しても、俯瞰で注意深く観察し理解するという特徴があります。周囲の人と適切な距離を保ち、自分自身を客観的に認識して、考え方の異なる方とも協調性を高めることができます。
メタ認知の分類
メタ認知の概念は、「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」の2種類に分かれています。
メタ認知的知識
メタ認知的知識とは、自分自身が認知している知識全般 (知覚、記憶、学習、言語、思考など)を意味しています。
メタ認知的知識は大きく3つに分類できます。
①人に関する知識
自分自身や他の人、一般的な意見についてどのような知識があるのかを俯瞰し、さらに内容を細分化して深く追求していきます。
自分の強みや弱み、得手不得手を意識して客観的に評価し認知するのは、自分自身の特性を認知する個人内変数に関する知識です。
複数の人と比較し、あの人よりも上手くできるといった認知は個人間変数に関する知識となります。そして人間一般に対する認知は一般的な人変数に関する知識と示され、自分の中にある思考の傾向や一般的な意見とのズレを認知しています。
②課題に関する知識
課題に関する知識は、自分が過去の経験から獲得した課題に関する知識を指します。過去からの経験の積み重ねに基づき、自らを客観的に認知し、判断するものになります。
認知心理学で物事の認知プロセスの概念を指す「スキーマ」という言葉がこれに当てはまります。
例えば、人数の少ない場所ではうまく話せるが、大勢の前でプレゼンテーションを行うと緊張して言葉がたどたどしくなるという場合があります。
課題に対して自分がどのように意識しているかが表れます。
③方略に関する知識
方略に関する知識は、先ほどの課題を解決するための具体的な知識です。
経験から得た課題解決の要素を認知し、コントロールする役割とも考えられます。
メタ認知的技能
メタ認知的技能とは、メタ認知的知識から現在の自分の状況を確認して課題解決に向かうために対策を講じ、改善、実行する能力を意味します。
メタ認知的技能は、
・モニタリング
・コントロール
の2つからなります。
モニタリングとは、自分自身の認知が正常に働き、効果を高める意識的な工夫が適切にできているかといった情報を監視、観察することをいいます。
コントロールは、モニタリングで得た気づきや評価などをもとに、メタ認知的知識から、自分の癖や個人差をうまく理解して認知活動を牽制することを指します。
メタ認知能力の高い人・低い人の特徴とは?
メタ認知能力が高い人は、日常的に自分の認知活動を客観的に捉え、行動のコントロールが可能です。一方、メタ認知能力の低い人は、主観で判断する場合が多く、感情に流されて極端な行動をとる傾向にあります。
ここでは、メタ認知能力の高い人と低い人の特徴を解説します。
メタ認知能力の高い人の特徴
①判断力がある
メタ認知によって、自分や他者を客観的思考で認知し、特性を判断します。課題の本質を正しく捉え、適切な方法で課題解決に導くことができます。
②冷静な対応
自分自身を客観的に捉えられる人は感情や主観をコントロールできます。トラブルや予想外の出来事に対しても突飛な行動に出る心配はなく、ブレがないため安心出来る存在です。
③課題解決力がある
自身の思考や思い込みに捉われないため、慣例に対しても柔軟なアイデアで対抗することが可能です。前例のない課題に対しても多面的な切り口から対応できます。そのため、メタ認知能力の高い人は総じて課題解決力も高くなるといえます。
メタ認知能力の低い人の特徴
①場当たり的な対応
メタ認知能力の低い人は周囲の様子を俯瞰できず、感情先行で動いてしまいがちです。相手を慮る対応をできないばかりか、不快感を与えるような言動、行動を取ってしまう傾向にあります。
メタ認知能力を高めるメリット・デメリット
現在はVUCAの時代と呼ばれ、変化が激しく先の見えない状況下に置かれています。このような時代の変化に対して効果的に適応するポイントは、成長意欲を失わず、常に自身の改善を図るメタ認知能力の高い人が必要です。また逆に、メタ認知能力を高めた際に生じるデメリットについてもご紹介します。
メタ認知能力を高めるメリット
メタ認知能力の向上で得られるメリットとして、下記が挙げられます。
①コミュニケーション能力の向上
メタ認知能力の向上で主観と客観を巧みに扱えるようになり、相手の意図を汲み取りつつ自身の行動の意図を説明することが可能になります。
協調性が高く、相手の気持ちを尊重した対応は部下だけでなくクライアントからの信頼獲得にもつながります。
②感情のコントロール
メタ認知能力が高い人は、気持ちの変化を感じた時には自分自身を俯瞰し、冷静な対応ができます。この状態が長く続くと大きなミスにつながりかねないと判断して、感情や行動をコントロールします。
メタ認知能力を高めるデメリット
メタ認知の高さはメリットにばかりスポットが当たりがちですが、デメリットが生じる恐れもあります。
メタ認知能力の高い人は自分自身を客観視でき、多面的な視点を持つがゆえに、周囲の視線を気にして自意識過剰になってしまうケースも見られます。思考をフル回転させる過集中が原因の疲弊や、プレッシャーにより本来の自分らしさを発揮できなくなる場合もあるため、フォローが必要です。
メタ認知能力を高めるためのトレーニング方法と有効な施策とは
メタ認知は、日々繰り返し働かせることにより学習を促進させ、能力を向上させることが可能です。
次にメタ認知能力を高めるためのトレーニング法について解説します。
モニタリング
モニタリングとは1970年代に心理学者 マーク・スナイダー氏によって定義された、自己観察または監視の手法で、自分自身の無意識下の行動や思考といった認知情報を深く観察することを指します。この中には認知についての気づきや予測、点検などを含みます。
メタ認知能力を高めるには、内省を行い自分の弱みや欠点から逃げずにしっかりと向き合う必要があります。目標の設定や、より良い自分になりたいという思いも内省の一つです。
セルフコントロール
モニタリングの結果から課題や欠点が導き出されたところで、次に行うのは自身のコントロールです。コントロールとは、自分自身の課題や欠点の改善策を講じ、計画、修正を行います。こうしてモニタリングとセルフコントロールでトライアンドエラーを繰り返すうちに、課題解決力やポジティブな思考が身につき、メタ認知を鍛錬していくことが出来るのです。
メタ認知能力を高めるためには1on1コーチングが有効
メタ認知とは、自分自身を俯瞰して観察、評価し、自分の望む方向にコントロールすることです。しかし言葉では理解できても、行動に移すのは難しく、普段から意識していても客観的に自分自身を見つめるのは難易度の高い課題だと言えます。
具体例として、企業内で行われる1on1ミーティングもメタ認知能力の向上につながります。上司は質問を行いながら部下の認知活動を聞き取り、お互いに認知活動を共有します。気づきを得た部下の成長が促進される1on1ミーティングは非常に有効です。
部下と上司の認知に差があった場合、部下は改めて振り返りの場を持つ必要があります。そして第三者の認知を理解できるようになると、メタ認知能力の向上を自覚できます。
メタ認知能力向上策の新たな選択肢:1on1コーチングに外部リソースの活用
上司と部下の1on1ミーティングで効果を引き出すためには上司の傾聴スキルが重要な役割を担います。しかしスキルには個人差もあり、なかなか同じレベルを保てないのが実情です。
この問題に一役買うのが外部プロ人材を活用したコーチングです。
〈hanaseru〉のコーチは全員が厳しい審査に通過したキャリアコーチです。
社外の第三者との対話に視点を移すと、自分自身を俯瞰出来るようになります。思考の癖や個人差、特性を観察、評価で望む方向へのコントロールが可能です。〈hanaseru〉では、コーチング理論に基づいた対話でマネジャーの自己理解が進み、自己効力感を高め、意識の変容を促します。
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最後に:マネジャーの課題を解決に導く「メタ認知」とは? 注目される能力を徹底解説!のまとめ
メタ認知能力の高さは自分自身や周囲の状況を俯瞰し、自分の望む方向へコントロールする力と比例しています。メタ認知能力の高い人は客観的思考で本質を見抜く力があり、課題解決力の高さや協調性で信頼関係を構築できる傾向にあります。
モニタリングとセルフコントロールの繰り返しでメタ認知能力は鍛錬でき、業務の効率化や成果向上がビジネススキルの向上にもつながります。
メタ認知能力の向上にはマネジャーの課題解決力が必要で、〈hanaseru〉はマネジャーやリーダー層の自己理解を進め、意識の変容でマネジメント力の向上を図ります。
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