「悩めるミドルマネジメントを救え!」|トークセッションアーカイブ
働き方改革、労働者不足が加速する中、企業における人材育成の重要性への意識が高まっています。目まぐるしい環境変化に伴い、ミドルマネジメント層への業務負担が増えている中、効果的なミドルマネジメント育成の方法に課題を抱えている企業が増えています。
「悩めるミドルマネジメントを救え!」と題して、
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科 教授の野田 稔 氏(以下、野田)をお招きし、パーソル総合研究所 土谷 健太郎 氏(以下、土谷)、パーソルキャリアコンサルティング株式会社 田村 智絵美 氏(以下、田村) 、弊社 山口 知恵(以下、山口)と4名のトークセッションで管理職・リーダー育成の新しい在り方について語っていただきました。
(本記事は、2022年9月21日にオンラインで開催されたセミナーの内容を記事化したものです)
ミドルマネジメントを取り巻く状況はますます厳しくなっていないか?
土谷:まず、最初のセッションテーマとして「ミドルマネジメント」を取り巻く状況についてお話していきたいと思います。
いま、ミドルマネジメントを取り巻く状況は、
- 職場は慢性的人手不足
- ミドルマネジメントの待遇は相対的に悪化している
- ミドルマネジメントの負荷は増大
となっています。
中間管理職の高い負担感は創造的業務を妨げ、管理職の人材不足をもたらすということがパーソル総合研究所の調査結果から見えてきています。
この負荷の増大が、さらなる負荷の増大を招き、経営人材が育たない負のスパイラルがうまれています。
―「中堅崩壊」を出版した2008年と2022年の間で、ミドルマネジメントを取り巻く環境はどのように変化をしたのか?
野田:中堅崩壊を出版した2008年と現在の組織の構造は基本的にはあまり変わっていないですね。
管理職の多重責務者化は、本当にひどい状態だと思います。
書籍にも書いてありますが、多重責務者の人達は、辛くて、苦しくて、逃げ出したいのかというと実はそうではない、というのが非常に私は面白いと感じたのです。
仕事をどのように定義するかによって、逆に多重責務者の状態であるにも関わらず、生き生きとはたらくことができる、これが一番大きな発見だったのです。
何だ、これ心持ち次第じゃないか、ということなんです。
あれもやらなきゃ、これもやらなきゃという、細々した追いまくられている多重責務者だと辛い一方、でも、ちょっと見方を変えて色々やらなければならないけど、今私がやらなければならないことは何だっけ?と。
ちゃんと自分の頭の中でストーリー展開をして、新しい価値を生むということ、部下の能力を最大限引き出すことはどう考えても優先順位は高いですけれども、そこにふっと気がついて、そこを中心としながら自分の仕事というものをもう1回組み立て直すことができる人は、非常にモチベーションが高いです。
むしろマネジメントをしかやっていない、専業マネージャーさんよりもずっと視野が広くて、ベンチャー企業の経営者のように視点をお持ちだったケースがありました。
この状況がさらに進化していると考えておりまして、マネージャー間の格差がさらに広がった。
忙しいんだけれど楽しいよ、という人と、忙しさに追いまくられて受け身になっているしまっている人の差がどんどん広がっているのが今ではないでしょうか。
楽しさを楽しめる人、楽しさに追いまくられている人の差が激しくなってきた、というのが2008年から比べた時の今かなと私は思っていますね。
内発的動機付けがカギ。ミドルマネジメントが多重責務者という立場で内発的動機付けを取り組む秘訣は?
土谷:多重責務者という立場でありながら内発的動機付けの取り組みがうまくいっている事例を山口さん、田村さんにおうかがいしていきます。
最前線のマネジャーであるお二人に、ミドルマネジメントとしてのご自身の内発的動機についてお聞きします。
- 内発的動機を生み出す、あるいは維持する、ためにご自身で工夫されていることを教えてください。
- 今後も、内発的動機を生み出す、あるいは維持するために課題だと感じていることはありますか?
ーミドルマネジメントに意思決定の経験を数多くさせてくれる環境が大事
山口:自分の過去を振り返ると、今の事業を立ち上げた2年前から今まで気合と根性でここまで来たことを考えると(笑)
それが苦ではなかった。決断の数も多く、早くたくさん決めて、検証して…。それを楽しいと思う考え方をいつも心のどこかで感じていました。先生のお話で思い出しました。
野田:やっぱり仕事って追いかけられているとダメ。こちらから追いかけないとダメなんですよ。同じ忙しさでも全然身体の疲れ方が違うんですよね。
自分で設定して追いかけるマネージャーというのは健康だし、生き生きしているし、パフォーマンスが高い。
そこの動機の持っていき方が、追いかけるマネージャーとは全然違うということなんですよね。
土谷:追いかけられているところから追いかける立場へ移るにあたり、ご自身が心がけていたことや、
役に立った機会や経験などはありますか?
山口:大事なのは意思決定の経験というのが一番大事で、経験の数が多ければ多いほど、自分の力が強くなったと確信を持てる。
いわゆる権限委譲にあたると思うのですが、こんなに多くのことを自分で決めて良い、決めさせてくれる環境こそが大事だと考えています。
土谷:意思決定をして、結果がでて、その結果を自分自身で引き受けるという経験を通して自分自身が強化される。
そういったサイクルが生まれていったんですね。
―経営層はマネジャーに意思決定をしてもらいたい
野田:経営層はミドルマネジメントに意思決定してもらいたいと考えているんですよ。
もっとやってと思っているけど、マネージャーはやらないんだよね。
マネージャー達はチャンスが無いと思っているんだけど、ちょっと待て、チャンスは与えてもらうものではない、取りにいくものなんです。
最初はね、Noと言われるんですよ、「中堅崩壊」の中でも伊藤忠商事の丹羽さんが言っているのですが、ミドルマネージャー達がやりたいと言ったことに対し一発目でOKなんていうわけがない。いいなと思っても一応Noと言う(笑)
2、3回Noと言っても手を変え品を変え、やっぱりやりたいと言ってきたら元よりYesと言うつもりだったから、だったらやってみよう、と言う。
そういう厳しい上司、だいたいどこの会社でもそうなんです。
まさにチャンスも追いかけるものであるし、与えられるものではない。とりわけミドルになったらチャンスを取りにくることを経営者は絶対期待しているはずなんですよね。
土谷:まさに追いかけられる立場から、追いかける立場になるには意思決定が重要なポイントである。
とかくありがちなのは、ミドルマネージャーが取りに行く意識がなくて、待ちの姿勢になってしまうと経営者は困る。
そこがお話のポイントかと思います。
野田:ただし、マネージャー1人でやっていたら折れるからね。みんなそんなに強くないから。
そこは勘違いしていただきたくなくて、みんなが強靭なマッチョなマネージャーになれと言っているわけではないので(笑)
そこは強調しておきます。
土谷:そうですね、ありがとうございます(笑)
―他者と対話をすることで自分自身に気づくことが内発的動機づけ
土谷:田村さんは過去の経験振り返っていかがでしょうか。
田村:はい、20代の頃、全国の営業所を束ねる立場であった過去を振り返りますと、
経験よりも大きな役割と多重の権限と根拠の無い自己効力感で走ってこれたなと思っています。
野田:仮想的有能感ね(笑)
田村:まさにそうです(笑)セルフモチベートしていたのだと思います。今振り返ると仮想的有能感で、その結果利益や結果は伸ばせたけど、人を育てることができていたのだろうかと思うと自戒の念しかないです。叱咤激励と言いますか、場合によっては怒号を発することもあったのが正直なところです。
過去持っていた内発的動機づけと、未来の私からみた内発的動機づけと違う。
やらされていることに酔っている、受動に気づかない主導なんですよね。
ミドルマネジメントが未来をつくる仕事とオペレーショナルで管理する仕事両方のやりがいはあります。
2008年の私も今の私もそうなのですが、「自分で本当にこれやりたいんだっけ?」と思うことがあって。
コーチングが本日テーマですが、他者と対話をすることで自分自身に気づくことが内発的動機づけと思っています。
そのせいか、今の自分を過剰に信用しすぎることもなく、セルフモチベートするんだけど、どこかで自分が客観的にあるかどうか。
それが絶対に必要だなと思っていて、hanaseruはすごい着眼だなと思っています。内発的動機づけって深いですよね。
野田:内発的動機づけって、どのような環境であってもセルフモチベートできるのかっていうと、そんな人はいないわけですよ。
明らかに社会交換過程の中で他者からの刺激で自分の動機付けがより強まったり弱まったりするわけですから。
他者との関係を考えずに内発的動機づけを考えるのは、ちょっと傲慢だと私は思っています。
そんなに世の中は甘くないと考えているんです。
内発的動機づけをより充実させるためには、他者との関わりをより充実させることが重要。
だから越境的学習を繰り返さないといけないのだと思います。
一つのことだけで、今の世の中充実するなんて考えられないよね。
逆に多重責務であると言うことは、プラスにも捉えられるんですよ、考え方次第で。
ただこの境地にいくには中々自分一人ではできないから、他者の力を借りながら、学びながらほどよいポートフォリオを組んでいく多重責務化というのが人を充実させることだと思いますね。
仕事で頑張っているな、という人が意外とボランティアしていたりするわけですよ。
あの人暇そうだなって人はやっぱり休日は暇で何もしていなかったりするわけで
だから忙しさというのは物理的なものだけではないんだよね。うまい時間の使い方が伴うわけなんですよ。
土谷:忙しさというのは物理的なものだけではなく、ポートフォリオをどう組んでいくのかがポイントかなと思います。
内発的動機づけを維持していくには、他者との関係を重視する必要があって、大切なのだと思いました。
野田:動機を成長させる、という感覚ですよ。
より高度で良い、高前な動機に自らの動機を成長させていかなければならない。ソフィスティケートしなければならない。
赤ん坊のおっぱい飲みたいという動機からはじまって、ずーっとそこに留まっていてはだめなので。
動機にも質がありますので、それを成長させるといった過程が重要ですよね。
土谷:内発的動機づけを維持ではなく、成長させる、ソフィスティケートしていく。重要なポイントですね。ありがとうございます。
まとめ
野田先生をお招きして、ミドルマネジメントを取り巻く状況について、内発的動機づけの重要性についてお話いただきました。
マネージャー間の格差がさらに広がり、「忙しいけれど楽しいという人」と、「忙しさに追われて受け身になってしまっている人」の差がどんどん広がっています。
マネージャーの格差が組織のパフォーマンスの格差を生み、離職増加、業績停滞など、企業発展に影響を及ぼしています。
この負のループを断ち切るためには、マネージャー個人の内発的動機付けの質を成長させる(洗練させる)アプローチが有効です。
オンラインコーチングは他者との対話を通じて、自己理解を深め、より良い意思決定をするための手法です。
ぜひ悩めるマネージャーへオンラインコーチングをご活用ください。
登壇者プロフィール
大学院で学生の指導にあたる一方、大手企業の経営コンサルティング実務にも注力。
業界シェアNo.1に導く陣頭指揮を行った。2004年、結婚を機に旧インテリジェンスに転職。その後18年間にわたり現職においてキャリアコンサルタント、新卒/中途入社者/キャリアコンサルタントの人材開発設計及び運営管理、他部門の新規事業開発、事業管理を歴任。現在はミドルシニア人材向けの新サービス開発に従事。